レゲエのゆるいビートのうねりに身を任せたまま、何とはなしにでも物思いにふけっていると、ああ快楽っていうのはこういうことだなーと思う。倦怠や怠惰が快楽になるのは、年をとった証拠なんだろうが。
最近は、ヘッドホンCDでお気に入りの音楽(「カルメン」だったり「ドンキ」だったり、ランキンだったり丸山繁雄だったり)を聞きながら、駅から家までの閑静な住宅街(高級ではないが閑静ではある上に15分もある)を歩くのがささやかな幸せの時間。閑静だから細かい音なども家で聞くよりよかったりする。
そんなわけで今日は新書館の「白鳥の湖」CDについて。
ゴルコヴェンコ指揮、サンクトペテルブルク放送交響楽団。お値段は4800円(税抜き)とちょっとお高め(?)だけど、結構好き。セルゲーエフ版準拠で、赤尾雄人の解説付き。「踊れる速度です」というのがウリ(少なくともチャコットの店頭では)だけど、耳慣れたものよりもゆっくりめのような気がする。まあ再生機器によって多少の速度の違いがあるし、同じ速度で演奏していても、目から入る情報がない分だけ遅めに聞こえるのかもしれない。あるいはお教室とかでも踊れるようにゆっくりなのかな? ちなみにゲルギエフ指揮の「くるみ」全曲も持っているのだけど、これはうちのヘッドホンCDでは無茶苦茶速い。「45回転?」というくらい速い。うちの王子(笑)がひいひい言いながらマネージュする姿が思い浮かんで、楽しいといえば楽しい(←おい)。
私がバレエの全曲集を聞く、というのは、やはり舞台を思い出しつつになるわけだ。音楽と振りはわかちがたく結びついているし(もちろん忘れちゃってるのもあるわけだが)、音楽と舞台の想い出というのも、ひとつのものだから。その意味で、こういう舞台に則したCDというのはありがたい。しかも、このCDのよいところは、ちゃんと1幕(2場まで)がディスクA、2・3幕がディスクBと幕ごとに分けて収録してあるところ。幕の途中でディスクの入れ替えって、興がそがれるものねぇ。
ボヤルチコフ版との相違でいうと(誰がそんなことを気にするんだか)、1場のパ・ド・トロワの女性ヴァリ(後の方)が1曲足りない。2幕の道化の踊りが確か、ボヤルチコフ版では入っていない。とまあその程度。前奏のハープが独自バージョンとか細かい相違はあるらしいけれど、まあそこまでは。女性ヴァリの曲はかわいいから入っていて欲しかったけど仕方ないやね。道化の踊りも好きな曲なので、ある方がよいし。つか、多い分にはいいのだな。足りないとか、別の曲とかだと「あああああ……orz」みたいなことになるけど。
フェドセーエフの全曲CDも持っているのだけれど、こちらはモノホンのチャイコフスキー全曲(原曲版)なので、曲順が舞台とは違うし、速度が無茶に速かったり、リフレインが多かったりするので、どうも耳の勝手が違う。マネージュ中のうちの王子(笑)が「え、も、もう1周?」とあたふたするのが目に浮かんで、楽しいといえば楽しい(←おい)。この原曲版については「バレリーナへの道」の「白鳥の湖特集号」(左ブロックにリンク)に微に入り細に入った解説記事が出ていて、とても楽しく読みましたー。以前も書いたような気がするけど、この号は各カンパニーの版の細かい違いなどが詳しく、とても便利。ボヤルチコフ版についてはシェスタコワ(とシャドルーヒン)のインタビューはちょっとヒントになったな。ま、たとえてみれば、原曲版はオリジナルサントラ(といいつつ実際と曲のアレンジが違ったりするヤツ)、こちらのセルゲーエフ版は舞台中継みたいなものかも。それぞれではあるよな。そういえばAMP版のCDは「サントラ」表示になっていたような気が(笑)。
で。その原曲の全曲を持っているにもかかわらず、安いとはいえないこのCDを買ったのは、3幕のアダージョのため。面白いもので、「白鳥」も何度か見ているうちに、好きな場所というのがどんどん変わっていく。見始めた頃は3幕なんてつまらないと思っていたのだけど、今はこのオデットと王子のアダージョがいちばん好き。これは原曲にはない、ドリゴが編曲したところなので、セルゲーエフ版を買うしかないというわけ。グランアダージョの最後、王子がすっと手をあげるところも好きなので(「ドリゴの終止」)、もうドリゴありがとう! プティパありがとう!というところなのだな(笑)。話がそれるけど、あのパンシェするオデットのウエストを上から左手でがしっっとつかんで支えるのは相当な握力だろうなーと、いつも感心してしまうのだ。
でもあらためてこうして全曲を眺めると、2幕の最後、GPDDが終わってから幕が閉まるまで、ほんの2分間のできごとなのね。バレエって、意外と短い時間の中にいろんなことが詰め込まれているものだけど、たった2分でロットバルトに迫られ、誓いを立て、誤りに気づき、ロットバルトとオディール(と民族舞踊団)にあざけられて、母王に泣きつきつつ、毅然として立ち上がって走り抜け、母王は失神しなくてはならないわけだ。まさしく急転直下。大変だよなー、なんてことを思うのも、CDならではかも。
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