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2006/07/06

あの青空にさえも

 相変わらず、うんざりの日々。「もうじき中間選挙だからほんとに撃つかもよ〜」と言っていたのが、ほんとに撃っちゃったのかよ。「日本海」っていうから佐渡のあたりに落ちたような気になるけど(ロシアにとってはいい迷惑だから、彼らは騒いだ方がいい)。何年か前にうちの研究会に来た初老の紳士が、「日本ってミサイル持ってるんですか?」という質問をして、研究会中がぶっ飛んだことがあったけど、もうマスコミもそういうレベルだな。日本海でどれだけ米軍が演習してるかは全然記事にならないのにね。

 多分、うちには「普通の人」よりもたくさんの「悲惨」がやってくる。私はメール管理の類が得意ではないので、大きなメーリングリストには入っていないのだけど、それでも小さなクローズドのメーリングリストを通して、大小東西南北さまざまに、弾圧や裁判や封鎖や虐殺や、たくさんの「悲惨」と「不当」が入ってくる。すべてのものを読むだけの気力も無いし、一人のできることというのは本当に小さい。編集委員会のサイトの方に転載できるものは転載し、ネット署名や賛同ですむようなことは(もちろん全てではないが)やり、たまには自分のブログで触れたり、リンクを張ったり、会議の議題に突っ込んだり、原稿を頼んだり、ある程度できることはするけれど、それでもそれだけの「悲惨」や「不当」と向き合うのは、とても消耗する。自分の無力さかげんはわかっていても(なんとかしようと思うのが傲慢だという批判もわかってはいるが)、目をつぶったふりをしてそこを通り過ぎるのは、それだけでもひどく消耗する。ここ2年ほどはテレビでニュースを見るだけでも、まったく気力がなくなることもあるくらいだ。たくさんの、本当にたくさんの絶望と、本当に小さな、あるのかないのかわからないほどの希望。動けば動くほど、顔の見える範囲は(直接であれ間接であれ)広がっていき、心配もまた増えていく。パレスチナ人とイスラエル人との共生事業をしていたあの人たちは、入植地に住んでいたあの少年は、バグダッドのあの家族は……。なんとか片目をつぶって甘い夢の中に溺れていた時に、降って沸いたのが徴兵猶予撤廃だった。
 どこまでも続くと思える青空にでさえ、地上2キロまでは国境がある。領海の形をした、ちょうどパントマイムで作られたような壁が、しかし厳然と存在していて、何かがそこに「コン」と当たれば、空軍にスクランブルがかかるのだ。「自分たちは自由だ」と洗脳されている私たちは、高さ2キロの透明なパッケージの中で、何の夢に溺れているのだろう。2キロより上の空間は、気象、放送、偵察、あらゆる名称の衛星が支配している。
 「あの線を消しに行こう」とさっちゃんは歌う。ああ、本当に、あの線は我々には無意味なのだから。
 足下をすくわれるのはもうゴメンだ。心の中の青空にだけは、誰にも線など引かせまい。

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サッカーWカップ開催中、そしてアメリカの独立記念日、北朝鮮から7発のミサイルが発射。その意図は。6カ国協議の行方は。この問題について、あなたのご意見をお願いします。 [続きを読む]

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