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2006/09/03

太陽は届かず、石は降る

 そんなわけで昨日(というか今日)の続きなのだが。

 その前に、linkページに講師の一人だった太田昌国さんの「状況20〜21」を追加しました。「現代企画室」という出版社のサイトの中にありますが、太田さんのコラムや短めの原稿などを集めたページです。ラテンアメリカを初めとする民族問題が専門の方ですが、いつも大変示唆の多い文章です。
 私が太田さんの文章が好きなのは、いわゆる「政治」の文脈だけでなく、映画や文学といった分野から、「今」という時代状況を読み解く試みを続けているから。ラテンアメリカの文学や映画については私は全く疎いし、中東・アジア圏にも全然強くないのだけど。私が書いている映画の話は文字通り「我田引水」なんだけど、少しは影響も受けてるのかなぁ(怒られそうだな)。アングラや舞踏とかにも詳しい、奥の深い人。だけど、たまにはロシアの話もして下さいよぉ。

 で、昨日の続き、というか集会で見たフィルムの話。
 今回は講師の話のほかに、「キャンプに太陽は届かない」(The Sun Doesn't Shine in the Camp)というドキュメンタリーの上映があった。これは占領下パレスチナのバラータという難民キャンプで、03年12月から04年の3月に撮影されたビデオ(35分)。何人かの住民へのインタビューと、彼らの生活が記録されている。ネット上で配信されていて、誰でも自由に使うことができるものだそうだ。ただし、基本的に英語。アラビア語で話されている部分は英語の字幕があるが、英語の部分にはない(結構聞き取りにくい)。しかも、日常会話で使わないような単語も入ってくるので、私のようにそもそも英語がうんざりするほどできない人間にとってはキツイ。日本語での簡単なスクリプトは配られた。

 そんなわけで細かいことはわからなかったのだが(苦笑)、映像だからわかるところもある。たとえば外出禁止令の出ている、ゴーストタウンのような通りを、ハンビーのような装甲車や戦車が通る。通行する装甲車に向かって、雨あられという言葉では不十分なくらい、どかどかと石が降ってくる(あちらの家というのは、屋根の上が大概屋上として使えるようになっているので、そこから人々が石を落としているのだ)。もちろんそんなもので装甲車はびくともしないから、全部車体の上で跳ね返って道路に散らばる。それでもとにかくシャワーのように、でかい石がどかどか降ってくる。

 次に何かが通るまでにその石を片づけようなんて人はいないから(そもそも外出禁止だ)、次に通る戦車はそれを踏みしだいて(ばりばりと音を立てて)やって来る。またしても石がどかどか降ってくる。今度は戦車の前にたくさんの若い(中には幼い)男たちが集まって、正面から石を投げる。石だけでなくバケツも投げる。そこにある物はなんでも投げる。壊れたイスも投げる。もちろん、石もバケツもイスも、戦車の装甲に当たってぼかぼか跳ねるだけだ。でも投げる。そのうち、戦車の前の部分を足がかりに一人が、あちこちに照準を向けている主砲にバケツをかぶせる。知ってか知らずか、戦車は砲をぶんぶん振るが、バケツははずれる気配がない。その間もみんなはとにかく何かしら投げる。見ているこちらははらはらして、戦車が撃ってくる前に(主砲といわずとも、中から兵士が出てきて撃つことだってあるわけだから)逃げてくれよー、と思うけれど、投石はやまない。

 前からやってくる戦車という物は、中に人が乗っている「乗り物」とは思えない。やはりそれ自体が意思を持った「バケモノ」のように見える。なんのダメージも与えられないとしても石を投げずにいられないのは、そういうこともあるのかもしれない。もっと効果的な何か、とは思わずに(あるいは思っても実行できる条件がないのかもしれないが)、とにかく人々は、あまりにも原始的に石を投げ続ける。
 逆に戦車の中にいる人は、外の人が「人」に見えるはずだ。占領地での勤務を拒否する運動もあるが(これにはいわゆるベテラン=予備役も参加している)、任務終了後に壊れてしまう兵士が多いのも無理はない、と思う(こちらの二番目のコラムが参照できる……かな)。投げる方にも、投げられる方にも、いいことは何一つない、としか思えない。

 

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