つうわけで、パリオペのジゼル。ムッサンとペッシュの回です。
いやー、なんかすごく忙しい版だったなぁ。バール版を見るのは初めてだけど、印象としてはちょっとライト版に似てるかも。あくまで「印象」として。妙に細部のリアリズムに凝るところとか。ライト版も見てから3年くらい経ってるから、もう忘れちゃってるんだけど。1幕なんか、常に誰かしらが舞台を走ってるような気がした。2幕も音楽が早かったんじゃないかな。
ペザントのカルボネがすっごくよかったですー♪ シンデレラではプロデューサーで、ある種の色物だったからどうかなと思ったけど、正統派のペザント。両方観られてよかったなぁ。ニコニコでキラキラでしたよ。膝から下の捌き方が好み。いやー、今回の来日ですっかりお気に入りかも。この版だと、大公一行もいっしょにペザントを観てるんだけど(身体の弱いジゼルの替わりに踊りの接待、みたいな感じ)、女性のソロの合間にも大公に向かって「あれ、僕の彼女なんですよー♪」なんてのを入れてて(←無礼っつうか、大胆っつうか)楽しかったです。パリエロの方は、バランスがすごく強かったけど、あまり好みではなかったな。
……ヤンの大公さまは、一瞬「ラジャかよ!」って思っちゃったよ(笑)。
ニコラ・ポールのヒラリオンは影が薄い。そりゃね、いつも観てるヒラリオンが、生醤油一本、みたいな人ですけどね。それを差し引いても影が薄い。ジゼルの死の後、アルブレヒトが「お前のせいだ!」ってヒラリオンを指さしたときに、「こいつ、何かやりましたっけ?( ̄▽ ̄)」って半ば本気で思っちゃったもんなぁ。見せ場の2幕の冒頭も、スモークと脇で博打うってるジャワズにまぎれちゃってるし、踊り殺される場面は短く刈り込まれちゃってるような気がするし、演出的にも不遇かも。踊り殺されるところは、ウィリズの高速かごめかごめに目を奪われちゃってたしなぁ(←加速装置ついてるかと)。
いやさあ、コールド(村人)の男の子に一人、すっげぇ面白い子がいて。背がぐおっと高くて、髪がかなり濃いブラウンで、巻き毛とストレートの間くらいのゆるいカールの子。ジゼルのママの「ウィリ伝説物語」中に、いちばん下手側で彼女といちゃいちゃしてたヤツ。その子がやたら面白いんでついつい目がいっちゃうんだけど、ヒラリオン乱入場面で、よりによってど真ん中、ヒラリオンの真後ろにいたもんだから、狂乱の場だってのに、最初のうちはジゼルもヒラリオンもアルブレヒトも観てなかったってゆー( ̄▽ ̄)。いくらなんでもそれはどうなんだよ、ぢぶん。なんか気になるー(笑)。
コゼットのミルタは「女王」でした。ドゥがフルステーとジザンダネなので、「女王と子どもたち」って感じ。ウィリはマイムが強く、メリハリが利いていて、たいそう怖かったですが、ぢぶんとしてはあまり好みの演出ではなかったです。演出の問題なので、好き/嫌いのレベルでしかないですが。「人でないものたち」ではありましたが、ある種の自動人形的な怖さというか。これにひっかかっちゃったら逃れられないだろうなー。フルステー、割りと気になるダンサーなので、ドゥが観られてよかったな。
ムッサンのジゼルはペッシュのアルブレヒトと合わせると、ちょっと「級長さんと先生」の恋のような(笑)。狂乱の場ではずっと前(客席奥の方)をみつめたままほかに何も見えておらず、「こんな風に花占いをしたの」「こんな風に二人で踊ったの」と、思い出に浸るのではなく、目の前のミルタとずっと話しているかのようでした。「狂ってしまった」というよりも、ミルタに連れていかれちゃったのかなぁ。それが母の語りと一致していてまたコワイんだよね。2幕はウィリとジゼルの間をいったりきたりするようなイメージ。踊りは全体を通じてよかったです。
ペッシュはフェミニンに寄ったダンサーだと思うのですが、今回はそれが「貴族的」なイメージを引き出していて、村人たちの中での「違う」感がありました。みんなで踊っていても、ひとりだけ「宮廷舞踊」的な感じで。独特の間が絶妙で、1幕では結構笑っちゃったな。2幕では、ウィリたちの中でやはりひとりだけ「生きている人」。ザンレールがすごくキレのある高速回転でびっくり。際立って高いジャンプ、というわけではないけれど、ベテランの踊りではありましたよ。さすが。
それにしても、ちょっと不思議なアルブレヒトだったな。プレイボーイでもなく純愛でもなく、ジゼルとのことは「遊び」というよりも「貴族のたしなみ」であったような。最後は夢オチではあるけれど、マラーホフのように悲嘆にくれるでもなく、ルグリのように「ジゼルの向こう側」にほのかな希望を見いだすでもなく、自分に起きたことを咀嚼しきれずにいまだ混沌の中にいるような、そんなラスト。でもそれが、妙に心に残るんですよ。アルブレヒトの中でつかなかった決着が、観ている自分に持ち込されるようで、居心地はあまりよくないけれど、その分心の奥に入り込んでくる。不思議な人だなー、ペッシュってのは。
今日はここまで。
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