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2010/11/01

骨からの戦世

 さて、今日(日曜日)は寝て曜日の予定だったんですが、結局、明大での写真展→神保町の古本まつり→新宿ハンズ、というコース。

 明大の写真展は、先のエントリに上げた「骨からの戦世」。人に薦めるからには、やっぱり自分でも行かんといけんよな、というのもありまして。明大に入ってすぐの左側、アカデミーコモンの1F。エントランスをパーテーションで区切ったような場所です。もちろん無料。

 沖縄での戦没者遺骨収集現場で撮られた写真です。そのほとんどは、土に半ば埋もれたものを丹念に掘り出していく過程の写真。化石の発掘現場の写真だといわれても、そのまま信じてしまいそうです。

 もう「収集」じゃなくて「発掘」の段階になっているんだ。65年。多くは道路や住宅の建設現場から「出土」した、そうした骨たち。ぢぶんの実家の辺りは弥生式だかなんだかの土器がよく出るところで、マンションだのスーパーだのの工事のたびに「遺跡調査」で2〜3ヶ月止まるのは当たり前なんだけれど、それが弥生時代ではなく65年前の遺骨なわけだ。
 もっとも江東区育ちの友人によれば、やはりマンションができる時などには「あそこはねー、(大空襲の時の遺骨が)たくさん出るわよねー」という会話はよくあるそうな。それを聞く位置にいるか、いないか。

 靴を履いたままの骨の足。それはまさに「かつて生きていた人」であって、埋葬されたものではないのだということを感じさせる。そんな骨に見入りながらも、自分を動けなくしたのは、骨ではなくて万年筆だ。

 万年筆。戦没者の遺品として、今までも幾度となく目にしてきた。骨があたかも化石の発掘現場から掘り出されたように見えるのに比べ、万年筆やそのほかの遺品は、「出土した」というにはあまりにも新しい。万年筆はその名の通り、きちんとペン先を手入れしていれば長く使うことができる。戦没者に限らず、遺品あるいは形見として手渡されるのは、それが長持ちするものであると同時に、故人の、例えば胸ポケットに入っているような、ごくごく身近な品であるからではないだろうか。
 自分の子どもの頃、万年筆というのは大人の象徴のように思っていた。手紙でも書類でも、アレで書くのがカッコイイ大人(の男)なんだ。実際、昭和前期の万年筆は今よりも高価な品だったろうし、ある種のインテリの印でもあったろう(例えば学徒兵のような)。それで何を書くのか。書かれた言葉は持ち主そのものではないのか。持ち主の思考をその美しいフォルムに詰め込んだ、万年筆とはそんなものだったのではないか。

 写真を見ながら、自分の頭に浮かんでいたのは例の「骨のうたう」だった。「戦死やあわれ/兵隊の死ぬるやあわれ」で始まる竹内浩三の詩にうたわれた兵隊の死は沖縄ではなく「遠い異国」であるけれども(本人が戦死したのはフィリピンだが、詩は内地にいた時分のもの)。
 竹内浩三もまた、「書く動物」だった。どんな状況でも書かずにはいられない、その衝動の強さが日記に遺されている。万年筆がそんなことも思い起こさせた、ような気がする。

 ひるがえって、もはや万年筆で何かを書くということのめっきり減った今の時代。自分たちの発した言葉は、見たこともないプロバイダのサーバーに溜まっていくだけなんだろうか? これだけ「書く」ことが、「書く」ことの意味が軽くなって、文脈を失った言葉がただただ浮遊している時代に、それでもなお「書く」ということはどういうことなんだろうか。

 とまあ、写真からやや離れたことも思い巡らしつつ。

 とにかくも、お時間のある方はぜひ。発掘した頭蓋骨からなかば化石化した脳が出た場面もDVDで上映されていました。
 


写真展はこちら。
 【比嘉豊光写真展 骨からの戦世(いくさゆ)—65年目の沖縄戦】
2010年10月29日(金)—11月5日(金) 無休 入場無料
     10:00—18:00 ただし10/29は14:00から、11/5は15:00まで。
会場:明治大学駿河台キャンパスアカデミーコモン1F展示スペース
    JR御茶ノ水駅下車徒歩3分
主催:比嘉豊光写真展実行委員会
お問い合わせ:明治大学理工学部芸術学研究室 (こちら)
電話044-934-7284 FAX044-934-7908 

 

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コメント

「骨の戦世」
世界9月号でみました。

「骨のうたう」と思いました
31日は、浩三さんの親戚の方も来場されたそうです。

関西では開催されないのかなあ・・・。

投稿: あんず | 2010/11/01 11:57

あんずさん、いらっしゃいませ。
なんとなくお名前と竹内氏の間に覚えが、と思ったら、以前「戦死やあわれ」を読んだあとにいくつかサイトを回った時に、あんずさんのブログにも寄らせていただいていました(今回拝見して思い出しました)。ありがとうございます。

世界の特集は読み損ねたのですが、今回出た岩波ブックレットは、その記事をベースにしているようです。写真もかなり入っていました。

今回の写真展は、パネルではなくプリントを直に貼った簡便な形式でしたが、それだけにあまり大掛かりでなく、市民会館のロビーなどでもできそうです。巡回展のようにできるといいのですが。

「骨のうたう」、やはり思い起こされますね。

投稿: 綾瀬川 | 2010/11/02 03:35

もう見ました、とても好きです

投稿: うたわれるもの同人誌 画像 | 2010/11/03 10:02

ありがとうございます。骨の写真が主体なので敬遠されがちですが、多くの人に観てもらいたいですね。

投稿: 綾瀬川 | 2010/11/04 04:02

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