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2011/02/17

バレンタインの思い出(ほろにが?)

 まだ師匠の事務所でも「若手」だった頃の話。

 師匠の2度目のガン(胃)の手術が終ったのが、ちょうど2月の初めだったのだと思う。「もう面会に来ていいよ(=暇だから来い!)。食事制限もないよ(=何でも持ってこい!)」という連絡があったので、デパ地下かなにかでバレンタイン用のチョコレートを買って、見舞いに行きました。

 病室で「えー、季節物ですけどー……」と言いながら包みを差し出すと、師匠がきょとんとした顔をして「なんでチョコレートが季節物なんだ」と本気で聞くので、こちらも予期せぬリアクションにどーしたものかと思っていたら、脇からオツレアイが「あなたっ! 世間はね、バレンタインなのよっ! バレンタインにはチョコレートなのよっ!」と叱ってくださいまして。Y子さん、ありがとう(ノ_-。)。

 「いやいやそれはどうも、お気遣いいただきまして」「いえいえこちらこそどうも」と、二人して大汗かきながら、まるで水飲み鳥のように互いに最敬礼しまくり。

 そうしたら師匠が、それで気を良くしたんだか照れ隠しなんだか間が持たなくなったんだか、おもむろに浴衣の前をはだけて、「今回はここからメスを入れてね、こういうふうに……」と手術の状況を見てきたように説明を始め(←本人は麻酔かかってるから見てません)、それを「はあ、はあ」と拝聴し、そうしたらさらに気を良くしたんだか調子に乗ったんだかサービスなのか、「前回の手術の時はね……」と始めかけたのを、「い、いえっ、それはまたの機会にっ」と押しとどめて(←ちなみに「前回」は膀胱ガン)。ええ、結局「またの機会」はなくてすみましたが、師匠はちょっと説明したさそうにしてらっしゃいましたです。

 術後の経過は良好で、3月の初めには事務所にも顔を出すようになりました。病院と事務所が歩いて10分だから、通院ついでみたいなもんですが。

 そうしたらある日、ヤマザキパンの白い紙袋を渡されまして。「なんでもホワイトデーというものだそうだから、チョコレートを買ってきたよ」とおっしゃるんですよ。ははあ、オツレアイに何か言われたんだなー、と思いつつありがたく頂戴し、袋の口を開いてみたら、中にはガーナとかルックとか明治ブラックとか、事務所のあるマンションの隣のヤマザキパンに並んでる板チョコが6、7枚でしょうか。

 「何がいいかわからなかったから、下のパン屋にあったのをいろいろ買ってみたよ」とまあ、そのあたりはとやかくは申しません。いやしかし、本当にどこから見てもそういう詰め合わせだな。紙袋だって、文字通り「パン屋の紙袋」がそのまんまだし。それでも父と2つ違い、少国民世代の師匠のホワイトデーですよ。ウレシイじゃないですか。あんまり嬉しかったのか照れ隠しか、つい口からぽろっと出ちゃったんですよ。

 「パチンコの景品みたいですね」

 ……いやもうまったく(大汗)。「なんだ、ちゃんとお金を払って買ってきたのにパチンコとは!」とすっかりおかんむりの師匠。いや、そりゃそうだ、そうだけどさ。でも怒る方向が微妙にあさってな気がします、師匠。

 なんやかんや言って、人生でいちばんインパクトのあるバレンタインとホワイトデーでした。師匠と不肖の弟子の自分は、大概こんな具合にお互い「微妙にあさって」な関係でありました。……って、まだ師匠、お元気ですけど。

 あ、初めて「彼氏」って人にあげたのは、いわゆる「手作りチョコ」(←溶かして固めただけ)でしたが、「これ、手作りでしょう? 豆から作るだから大変だよねー」と言われた時には、それはそれで途方にくれたもんです。以来、二度と作ってません。

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