魂の風景
「ヒト」には曲げられない「筋」ってもんがあるんだよってことで、久方ぶりの23号地を早めに抜けて、オーディトリウム渋谷(覚えられないよ!)の大津幸四郎特集のうち大野一雄特集三本立てへ。
といいましても、「ひとりごとのように」は以前東中野ポレポレで見たので、中抜けで飯喰ったりお茶飲んだり。あれは好きな映画なのでもう一度見てもよいかと思ったのですが(実際見たかったし)、さすがに目がキツイなーというのと、お腹ちょっと鳴ってたのとで(食べ物売ってないし)。中抜けしても半券を見せると入れるのがいいね、ここは。
以前から見たかった「魂の風景 大野一雄の世界」。チラシには「ダンサー大野一雄の絶頂期の映像詩」とありますが、まさしくほかに形容のしようがないというか。
上映後のトークショーで平野監督が語ったところによりますと、日大映研の城ノ内(元晴?)氏の追悼映画のひとつとして企画されたらしい。最終的には、撮影地をスタッフが選定し、あとはほとんど大野研究所にお任せだったようですが(というよりほかにやりようがない)、結果的には「追悼」的な作品に仕上がっているというのがなんとも面白い。
写真集の表紙でよく見る、睡蓮の沼の場面から始まります(慶人氏によると、「どんどん入っていっちゃうし、出てきたら脚はヒルだらけだし」だったそうな)。
ブナの森の中、見渡す限りの原野、山村の小学校の体育館、川、海……。その中をただ感じるがままに即興で踊る大野一雄。と、時々大野慶人。慶人氏のかぶりものが気になるよー。青いラバともアリクイともつかぬようなもの。
「ひとりごとのように」ではもっと顕著ですが、この人は「生きる」と「踊る」の間の境目をとっぱらってしまったんだろうな、とあらためて思ったことですよ。
まあ、ところどころ意識が飛んじゃったのも事実なんですが、それはそれとしても。
「ひとりごとのように」をはさんで、「KAZUO OHNO」は、ダニエル・シュミットによる、15分ほどの、これも即興の映像詩。以前、大野フェスの会場でビデオでちらっと見たもの。
双方の映画で思いますが、シャンソンがすごく似合うんですよね。シャンソン、歌曲。「魂の風景」ではウェーバーの野ばらで踊りますが、それがすごくいい。
体育館の場面では、教師とおぼしき男性が足踏みオルガンを弾いて、小さな女の子が延々と「むすんでひらいて」を歌うんですが、それも面白い場面。まじめな顔で歌っている女の子が、近づいてくる大野一雄を横目でちらっと見て、うっかり笑っちゃうんです。で、またすぐ素知らぬ顔で一所懸命歌うんだけど、ついつい横目で見ちゃって、語尾がお留守になっちゃう。でもまじめな顔でまた歌う。目にすごく力のある子でねえ。
とりあえず(こればっか)。
| 固定リンク
コメント