鞄図書館
最近読んだ中から。
芳崎せいむ「鞄図書館」
ジュンク堂の漫画売場をぶらぶらしてたら、見本品(中がちょっとだけ読めるようにシュリンクが細工されてる本)があったので、ぱらぱらっと眺めて買ってしまいました(笑)。09年の本だからもうだいぶ前のだけど、なんで今頃見本品。
「どんな本でも揃う」という「鞄図書館」。「司書さん」が持って歩く「かばん」の中にその広大な図書館はある。時空の切れ目にある図書館で、懐かしい自分の本と再会する人、生涯の友となる本と出会う人、「司書さん」と「かばん」の出会う人と本とのエピソード集。
つくづくねえ。図書ってのは「物」であるんですよ。「物」でないように見えて「物」。「物」でないものの詰まった「物」。そこについた(つけてしまった)シミや、書き込みや、思い出やなにやかやが、その図書を特別な「物」にするんです。それは本が図書という物質だからできるんですねえ。電子情報だけではありえない。情報を入れ替える端末ではなく、それ自身が取り換えのきかない「物」であって、むしろ例えばお気に入りのぬいぐるみや何かに近いような。
ぢぶんは、人に所有欲がある限り紙の本はなくならないという論ですが、人に「思い出」がある限り、紙の本はなくならないのかもしれません。もっとも、生まれた時から電子書籍で育った世代が大きくなるまでは、かもしれません。
小さな鞄から、命綱をつけた人々が出たり入ったりするシュールな絵ヅラや、司書さんとかばんのやりとりも楽しい。そして「万巻の書」もかなわないもの。
ハヤカワと東京創元文庫が好きだとより楽しめるかと(かたよってるなー)。海底二万海里がもう一度読みたくなったなっ、と。
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