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2012/11/07

2幕のつづき。

 相変わらず間が空いてますが、気がつきゃもう明後日(つか明日)からくるみですよ! なのにまだオネーギンは2幕ですよ……。というわけで、前回のお話はこちら

 あまりのことに涙も引っ込んじゃって呆然としているタチアーナにはおかまいなしに、オネーギンは下手のカード台に引きこもるし、みんなは戻って来てダンスの続きをするし。取り落とした手紙の成れの果ては友達が拾って慰めてくれたけど、その間もカードを繰るオネーギンの機嫌はどんどん悪くなってくるし。初演の時はそれでもいいカードも出るらしくて時々「( ̄ー ̄)ニヤリ」とかしてたくせに、今回は引くカード引くカードみんなダメ(←横浜ではちょっとだけいいのも?)、みんなこの田舎もんらがドンチャカやかましいのが悪いんだああうっとおしい(←八つ当たり)。

 3分半とは思えないほど長かったマズルカが終わって、グレーミンの登場です。お、やっと話のできる知ってる人がきたよ! といそいそと立ち上がります。「やあ久しぶり、それにしてもここは田舎くさくってヤになっちゃうねえ」「まあまあ」。グレーミンの方も、全然気に止めてないっぽい高岸さんやら、「ま、こんなもんだよ」とテケトーに合わせる後藤さんとか、初演時のちょっと腹に一物な平野さんやら、それどころじゃなかった森川くんとかまあこんだけのやりとりでもそれぞれに個性が出るなあ。

 ラリーナ夫人とタチアーナに挨拶したグレーミンはそのままラリーナ夫人に勧められてタチアーナとダンスの列に。オネーギンも立ったついでに……じゃなくて一応社交儀礼として夫人に挨拶し、「いやあ、素敵なお屋敷ですなあ」とわざとらしく(←ホントにわざとらしい)お愛想してみたりしますが、内心は面白くない。なんだよ、グレーミンにちゃんともう決められてるのにあんな手紙よこしてぐだぐだとうっとおしい、ああ面白くねぇ。アレですね、自分にその気はないくせに、好きだって言ってきた相手が別の男とくっつくとそれはそれで腹が立つという。どこの高校生だ。夫人の方はそんなことはお見通しだからグレーミンに対するのと比べたら冷たいですよ。見た目はいいが感じは悪いおっ……じゃなくて青年貴族よりは、多少おっさん……こっちはおっさんでいいんだよな……でも将来将軍になる温厚な侯爵の方がいいに決まってるじゃないですか。

 とはいえ、娘どもはそうは参りませんのよ。

 ちょっと留守にしてる間にカード台で遊んでいたレンスキーとオリガを「まあまあまあ」と引き止めてカードを引かせているうちに、ちょっと調子の出て来たオネーギン。初演では、無邪気にというよりも無神経に「なにしてるの、混ぜて混ぜて」と、しかも横浜では一緒に踊っていた平野グレーミンまで引きずりながらカード台までやってきて、せっかく上向いたオネーギンをぶち切らせちゃった友佳理さんでしたが、今回はもうそんな余裕はありません。むしろ初日の美佳さんの方が高岸グレーミンを引きずって歩いてましたが(←びっくりした)、友佳理さんは遠くからオネーギンをちらっと見、ちらっと見、ちらっと……で、そういう態度はそういう態度でイラっとくるから、やっぱり切れるんですけどね。ウラメちゃんだなあ。

 もういいから踊ろうよ、というレンスキーの手からするっとオリガを取り上げると、そのまま踊りの列に滑り込んで行くオネーギン。レンスキーも最初は「まあしょうがないや、ちょっとだけ貸してあげるかな」と思っていなくもなかったけれど、ふっと不安もよぎります。オリガも最初は「あらま?」と思いつつ、段々楽しくなってくる。だって、レンスキーはちょっとヤキモチやいてるみたいだし、相手はなんといってもオネーギンですもの! リードだってうまいし、かっこいいし、大人だし、手にキスするお作法もわかってないまっつんや、尻にしかれてしょんぼりする宮本くんや、二人にからかわれてパニックおこしちゃう杉山くんみたいなおこちゃまたちとはちがうんだから!

 えーと。高村さんの方がちょっと屈託があったような気がしますが、佐伯さんがナチュラルにハイになっていくのがすごかったですねー。これはレンスキーも慌てるわな。オネーギンも、タチアーナと向かい合ってしまった不愉快は、「返してよぅ、返してよぅ」というレンスキーを突き飛ばして解消してみたり。ひでぇ八つ当たり。
 ナガセくんの余裕→不安→すっげぇ不安→大慌て、二人で手を取り合ってレンスキー(とタチアーナ)を交わしていくうちに楽しく結託してしまうオネーギンとオリガ、3人とは対照的に沈んでいくタチアーナ、4人のそれぞれが見応えあるんだな。
 さすがに限度になったレンスキーに、タチアーナが割って入ってオリガをたしなめながらレンスキーに返すわけですが、こうした半端に分別くさい態度にオリガはむくれるし、オネーギンはせっかく調子出て来たとこなのに! と余計にイラっとするわけです。いや、八つ当たりですが。
 それでも舞台の奥で仲直りするレンスキーとオリガは置いておいて、「はいはい、何でもありませんよー」とその場をきっちりと仕切る女主人のラリーナ夫人(←矢島さん、貫禄だなあ)にうながされて、タチアーナのソロ。

 再びカード台を占拠して、不機嫌にカードを繰るオネーギン。それをちらりちらりと気にしながら踊るタチアーナ。いやもう、踊るどころじゃありません。こんな友佳理さんは、というかタチアーナは初めて見たかもなあ(あんなにあからさまに機嫌の悪いオネーギンも)。オリガと踊ってる時はあんなに楽しそうなのに自分にはひどく冷たいし、何だか自分が怒らせちゃったみたいだし、とにかく近くに寄るのもコワいくらいに「こっちくんな」オーラが出まくってるし。タチアーナとしては2幕の見せ場のソロなので、おずおずと、かつオネーギンを気にしながらでも踊るものですし、友佳理さんも初演の時はむしろ「空気読めません」的な強さで踊っていたように思いますが、今度はもうオネーギンの前で身がすくんで動けない。どんだけ不機嫌なんだよオネーギンってところですが、これがもうイライラしてカードを繰るのもままならないどころか、タチアーナに背を向けて座り直す(←大人げない)、カード台に肘をついてガジガジする(←大人げない)、それでも勇気をふりしぼってタチアーナが近づけば両手でカード台を叩いて立ち上がる。そりゃタチアーナだって泣いて逃げるって。

 もういい帰る! ってそこで帰っちゃえばよかったのに、目の前を夏の虫がふらふらと2匹飛んでるもんだから、つい思いついちゃったんだなあ。一瞬ぱあっと笑顔になったかと思うと、オリガの手をつかんで、ホールの真ん中へ。オリガもオネーギンに手を取られれば、そのままさっきの続きとばかり、一瞬で共犯者に。高村さんだと「おねーちゃんには目もくれなかったのに!」というちょっとした優越感も混ざっているような気がするけれど、二人ともオネーギンの「手の中」にするると入っていくんだな。佐伯さんといえば「踊りはうまいけどお人形」で、ペトルーシュカ(ベジャール版)では、木村さんの「友人」がいくら口説いても全然芝居を受けてくれなかったのに、もうオネーギンと踊りながらどんどんどんどん艶やかに変わって行くのにもう口あんぐりでしたよ。どうしたんだ、いったい。そしてこうやって人を小馬鹿にする時の木村さんは、どこまで楽しそうなんだか( ̄▽ ̄)。タチアーナがうっかり召還しちゃった悪魔は、もう先っぽが矢印になったシッポをぱたぱたさせて踊りまくり。もう周りのだれも一緒に踊らずに、非難の目が注がれまくっているのに、そんなことも目に入りません。ついにぶち切れた(なんか切れてばっかりだな、男衆)レンスキーに、ようやく「なんだよ、そんなに怒ることないじゃん、冗談なんだし」といった時には後の祭り。オリガをうながしてレンスキーの元に戻したはいいけど、レンスキーをなだめたオリガは戻ってこようとするし!

 レンスキーの元へ戻ったオリガが、レンスキーに手を取られたままオネーギンの方へアラベスクをする振りが2度ありますが、人によっては(というか普通)、おさまらないレンスキーに対してオネーギンに助けを求めるように見えると思っていたのですが(小出さんはそんな感じでは)、高村さんと佐伯さんが(レンスキーはレンスキーとしてなだめておいて)オネーギンにイカれちゃってたのにちょっと驚きましたよ。特に佐伯さんにはびっくりしたなあ。「……ね、なんでもないからね、機嫌直してね。じゃっ!」って、「じゃっ!」じゃねぇだろそこ! これには木村さんのオネーギンの方も (・_・)エッ....? 、オレ、君には何もしてませんけど? ……って、してますよ十二分に。怒ったレンスキーに突き飛ばされても、オネーギンの胸に「きゃー♪」って。まずいと思っていても習慣で抱いちゃうんだよな、こういう時。なんというか、オリガに対しては、ちょっと保護者入るというか。恋の相手じゃなくて、お子さま扱いなのは見ればわかるんだけど、レンスキーにはそんなことは目に入らないんだよな。その意味でタチアーナはうっとおしいけど、一応「レディ」並の扱い(←全然そう扱ってるように見えないけど( ̄▽ ̄)それはオネーギンが紳士じゃないからー)なのはちょっと面白いんですけどね。

 いや、面白がってる場合じゃなくて、おかげでレンスキーは手袋投げちゃいましたよ。こうなったらもう後には退けません。なだめるオネーギンを突き飛ばし、後ろにいた氷室ックともう一人がもらい転びしているのを杉山くんが助け、氷室ックが……氷室ックが……、重要な場面だってのについ氷室くんにそのまま目が移っちゃったじゃないですかよ! なんなのなんなの!
 と、真ん中をうっかり見そびれているうちに、すでに周囲にとりなしてくれる人もいない、孤立無援のオネーギンは、手袋を拾うときっぱりと礼をして、ついでにタチアーナを睨んだりしながら去って行ったのでありました。

 つづく。

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