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2013/02/19

ラコットの映画のあとのトーク

 ということで、映画の後の長野氏のトークはあまりメモを取らないで聞いちゃったんですが、個人的に面白かったのでメモったところだけ、少し。そんな感じなので、不正確かもしれないし、自分がそのとき考えたことと混ざっちゃったりしてるかもしれませんが、その辺はご容赦を。

 面白かったのはバレエの「スタイル」の話です。身体のスタイルではなくて、いうところの「アシュトン・スタイル」とか、そういう意味での(「バランシン・スタイル」というとバランシン好みの身体みたいな気がするけどな( ̄▽ ̄))。

 ラ・シルに代表されるような、女性が斜めに身体を倒すラインがロマンチック・バレエの主流であったこと。これで前方に手を伸ばしてふわふわさせ、またポワントでふわふわ踊ることで、妖精やウィリといった「人じゃないもの」のふわふわ漂う感じを出す、というのがまさにロマン主義(の表現)だった、というわけですね。それが、テクニックの中でも回転が重視されるようになって、軸を垂直に通すようになっていき、その分短くなったラインを、垂直を軸にしつつ全身をたわめることで長く見せる、という。

 山岸凉子の「黒鳥」の中に、垂直の軸を崩して踊れないトールチーフに対し、バランシンのいうままに垂直からはずれることのできるタナキルの新しさ、という場面がありますが、その前段階にあたるんですね。
 まあ確かに、すごい勢いでぎゅるぎゅる回る妖精っていうのもどうかと思うよね、イメージ的には……。

 で、ロマンチック・バレエに戻ると、その斜めになったラインから、やわらかくプリエさせて重心を下げ、正面に向いてぴたっと止まってポーズをとる、というのがそのスタイルである、と。

 以前、友佳理さんのシルフを見た時に、どれだけ踊っても最後は必ず形状記憶合金かなにかのように、すたっ、とシルフのポーズに戻るのがすごいなーと感心したものですが、まさにそれなんですね。それともうひとつ思い出したのは、これはロマンチック・バレエではないけれど、松山の女性の踊り方(というか清水さんの演出の仕方?)がそうですねー。森下さんの金平糖のヴァリが典型だけど、踊りのひとつの区切りのときに、正面を向いてポワントからアテールに1音使って降りてポーズをとる。それがなんだかすごく可愛いんだよなー。

 えーと、ほかに「アシュトンは19世紀ロシアに近いかも」とかメモってある。たしかこれは、アシュトンというのは1音1音を細かく刻んでステップを入れていくので、音を少しずつずらせて全体で帳尻を合わせる現代ロシア流の踊り方では踊りにくいのでは、という話だったと思ったけれど、あまり正確に覚えてないな。かつてはそれぞれの国/地域にそれぞれの流派/スタイルがあったけれど、ワガノワ・メソッド一色になりつつあるのを懸念している、というようなお話のひとつであったような。
 あと、ブルノンヴィルのラ・シルについては、タリオーニのを見て感動したブルノンヴィルが自分のカンパニーでもやろうと思ったときに、音楽の権利だか許諾だかがとれなかったのでああなった、というようなお話でした。だから音楽が違うんだなあ。

 会場からの質疑応答の中で、ジゼルの2幕のPDDの最初のアラベスクが、初めは「90度もあげたら美しくない」であり、その後誰だかの時には(忘れました)「90度にあげるのが美しい」になり、現在は90度以上、135度くらいあげないと美しいと思われないというように、同じポーズでも観客が「美しい」と思う基準が変わってきているという話がありまして(質問も応答もそこがキモではなかったんだけど、応答の肝心なところがうろ覚えなんでそこははしょりまして)、うんまあそれはそうなんだよなあ、とも思いつつ。

 だって、スケートで言ったって、つい何シーズンか前までは、4回転なんて挑戦するだけでスゴイ、みたいな感じだったのに、今や成功してナンボ、ですもんねえ。個人的には、たとえばワシリーエフ+オシポワの超人技っていうのは見てて疲れるだけで、ガラがつまんなくなっちゃたのは、結局そういう技の競い合いになりがちだから、というのもひとつあるんだよな……。もちろんそういうのが好きな人はいっぱいいるのもわかってるけど。

 なんやかんやいって、ラコットの「無駄に長い」といわれるような、牧歌的でのんびりと、α波出まくり、てのが好きなんだよなあ。ブルノンヴィル版はさくさく話が進んでそれこそ無駄がないけど、その「無駄」の部分が好きなんだよね。露天風呂にだらだらつかるみたいな感じの。
 

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コメント

綾瀬川さん、興味深い話をありがとうございます。

何が美しいかというのは人それぞれ感じ方が違いますよね。
10年くらい前、マラーホフが「バレエはどれだけ高く跳ぶか、どれだけ多く回るかではない。サーカスではないのだから」という趣旨の発言をしていて、当時飛ぶ鳥を落とす勢いの熊川さんを指して言ってるのかなと思って聞きました。自分は熊川さんも好きだけど、マラーホフのバレエを観ると言っている意味もわからないではない・・・
で、あまり小さいことにはこだわらず好きなバレエを見続けてきました。マラーホフはワシリーエフのことはどう見てるんでしょうね(笑)
好きなバレエと言えば・・・木村さんであることは言うまでもありません。これから少しでもたくさん観れることを願っています。

投稿: | 2013/02/20 09:00

質問をなさった方も、「ファーストポジション」に触れて、
「若い人の身体能力はすばらしいが、サーカス的なバレエが今後求められるのだろうか?」といったような趣旨でした。
それに対する応答の中で、アラベスクについての話があったのですが、
肝心の応えの部分が(多分、それでも守るべき「スタイル」もあるといったニュアンスだったと思うのですが)うろ覚えでして(汗)。
話が面白いと逆にメモを取らずに聞いてしまうので、困ったものです……。
いろんなカンパニーがそれぞれの作風を持って、それが活かされて、
見る側が好きなものをチョイスできて……というのが
ありきたりではあるけど、いいと思うんですけども。

木村さんにはミルタの気持ちで!(←踊れー踊れー……ってひどいファンだなあ)
今回のキャストに不服はないけど、
木村さんと友佳理さんのラシルも見たかったですねえ。

投稿: 綾瀬川 | 2013/02/21 03:43

昨日はあわてていて名無しですみませんでした。

確かに木村さんと友佳理さんのシルフ、見たかったですねえ。
ミルタの気持ち・・・わかります(笑)

投稿: かかし | 2013/02/21 10:14

あ、かかしさんでしたか(^▽^)。お気になさらずに〜。
ココログの仕様なのでしかたないんですが、
投稿者がコメントの編集をできないのは不便ですね。
いらん仕様変更はあるのに、そういうところは変わらないんですよ……。

投稿: 綾瀬川 | 2013/02/22 01:47

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