« 小休止 | トップページ | 宇宙人東京に現る(おはなし) »

2013/07/27

「戦火の中の……」ができるまで

 最近読んだ本から。

  「「戦火のなかの子どもたち」物語」 松本猛著

 先日、ちひろ美術館で買った本。著者の松本氏はちひろの息子さん。遺作となった「戦火のなかの子どもたち」ができるまでを、背景であるベトナム戦争や絵本作家たちの反戦運動、実際に使われた資料、ちひろの生活などを織り込みながら解説していく。

 「戦火のなかの子どもたち」はいわゆる「物語絵本」というよりも、「イメージ絵本」とでもいった方がいいのかな。ベトナム戦争のただなかにいる子どもたちに思いをはせて作られた絵本。その絵本がどのように作られたのか、残された2つのダミーと初校、完成品の4点を比較しながら、絵1枚1枚について、その意味や描かれた経緯、本の中での位置づけなどが検証される。当時、その作業を手伝った松本氏ならではのものだ。

 一応ぢぶんもかつてはその系統の編集者であったので、作業としてはよくわかる。月刊誌だったからサイズは決まっていて、専用の下絵用紙にラフを描いてもらうんだけど、上がったラフは必ずコピーを取って原寸大のダミーを作るんです。でないと、絵を断ち切ったときや、ページをめくったときの画面転換の感覚がちゃんとつかめないから。一度で上手くいかないときは、画面を入れ替えたり、拡大/縮小コピーを取って大小や配置を変えて見せたりして、作家に提案するのも編集者の仕事。ま、ぢぶんの頃はDTPどころか、カラーコピーも専門店に預けて1時間待ち、とかの時代ですからなー。あはは。

 しかしラフはともかく、初校から最終校の間に、順番どころか絵まるまる差し替わったりしてるのはびっくりした。予算なかったら絶対無理。4色でスキャンからやり直しって、どんだけーーーΣ( ̄ロ ̄lll)。それだけで、版元の岩崎書店さんの本気度がわかるというものですよ。すげぇ。

 1枚1枚の絵のエピソードもそれぞれ面白いのですが、こうして見ていくと、ちひろの絵本自体が至光社の名編集長・武市さんの影響をすごく受けている、というのもわかって面白い。「戦火……」は岩崎書店から出たけど、いわれてみれば武市さん的だ。ちひろ的なものと武市さん的なものがすごく近い。やっぱり育ててくれた人/育てた雑誌・版元のカラーって出るもんなんだなあ(と、いろいろ思い当たる)。至光社のカラーは結構独特だもんな。

 えーと。ぢぶんは元々、そんなにちひろの絵が好きではないんですよ。あの塗りつぶした瞳や、赤ちゃんのぷくぷくした質感みたいなもの、要は「魅力」といわれてる部分にあまり共鳴しなかったというか、むしろ不気味で怖かったんですね、そういうものが。それは最初の記憶が、家にあった「わたしのちいさかったときに」という、「原爆の子」から選り抜いた文章に絵をつけた本だったためもあるかもしれない。しかし「戦火の……」は、割に例外的に好きだったんですね。そのわけが、絵の分析を読みながら、なんとなく腑に落ちていったような、そんな面白さもありました。

 完成品を含めた4種類のものが対照されて載っていますし、中の絵もかなり載っているので、手元に絵本現品がなくてもよくわかります。絵本作家たちがやった反戦野外展の話が面白かったなー。


 

|

« 小休止 | トップページ | 宇宙人東京に現る(おはなし) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 小休止 | トップページ | 宇宙人東京に現る(おはなし) »