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2014/05/31

拝啓天皇……

 さて、やや脇のエピソードを含めて。

 入隊すぐに五・一五事件のエピソードが出てきます。夜中に抜き打ち夜間演習みたいな格好で兵隊達がかり出され、青年将校から「オレと一緒に死んでくれるか」みたいな演説を聞かされてね。ついてきてくれる者は一歩前へ、って言われて、でも立ってたのが斜面だったもんだから、後ろの兵隊がよろけたのに突き飛ばされてムネさんが前に出ちゃう( ̄▽ ̄)。するとムネさんが行くならオレも、ってヤマショーが出て、あと何人かが続いてビシー!っと出ちゃうもんだから、まるでその気がないムネさんも引っ込みがつかなくなっちゃって。
 その後将校はすぐに軍を追われ、翌年五・一五事件が起きました、って。二人とも行かずにすんでよかったねえ、と思うけど、いくつかの含みのあるエピソードだよね。226もそうだけど、兵ってのは、直属の上官が何か言えば、納得できたかできてないのか自分でもわからなくても部隊としてそうせざるを得なかったり、演説やまわりの空気にカンドーしてはずみで命をかけることになったり、志願が引っ込みつかなくなっちゃったり。

 印象深いエピソードと言えば、多々良純の准尉を忘れるわけにはいかないですな。兵隊不足で再召集されたムネさんは、召集事務をやる部署に配属されるんですが(なのでヤマショーも再召集されてきてることを知る、と)、そこの上司が多々良純。温厚そうだけど気が小さくて要領はよくなくて、しょっちゅうよその将校に怒鳴られてるんですが、酔うと「オレだって今は事務をやってるけど、野戦に行けばよー」なんてわめいたりしていて、事務屋が一段下に見られてるのがわかるんですが、そんな准尉についに野戦(つまり中国戦線)行きの辞令が降りてですね。どんどんおかしくなっていくんですよ。この辺りは多々良純の面目躍如といいますか。顔の片側だけひきつらせて泣くように笑うとか。

 提灯張りが忙しくなると再召集がかかるとか、上手いなあと思うんですけどね。

 復員して、汚い格好でやってきて、人の家の台所事情もかまわずに大酒を飲むヤマショーを、ムネさんの妻は最初はいやがるけれど、一度一緒に買い出しに行ったらすっかりそのまっすぐさと話の面白さで大好きになってしまう。ヤマショーの話の巧みさ、調子のよさは、彼が生きていくために身につけたものなんだろうなあ。寅さん以前の代表作と言われてるけど、基本的には寅さんの原型だよね。現実世界ではなかなか受け入れられない、自由人というよりも、そのようにしか振る舞えない。

 おもしろ可笑しく描かれてはいるけれど、「軍隊文化」の持つ問題も、そこそこ見えるようになってはいる。鶴西が前線に行く前に妻が子供連れて面会にくる場面とかね。ギャグなんだけど、そのもの悲しさというか、否定された人間性みたいなものをムネさんがちょっとすくい上げてみる(自分は女買いに行っちゃうんだけどさー)。場面場面に出てくるそれを見るかどうかは、見る側の感性に寄りけり、ではあるなあ。

 それにしても、加藤嘉が若いのに若くない。50そこそこくらいのはずなのに、やっぱりじいちゃんっぽいのはなぜー( ̄▽ ̄)。

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