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2014/06/09

美しいひと

 さて、オランダの元兵士の被爆者の話です。

 人というのは都合よくも都合悪くもいろんなことを忘れるわけですが、「鬼畜米英」というあまりに、日本はオランダとも戦争してたことを忘れてるんじゃないかと思うこともあるわけです。そらもちろん、インドネシアの権益がらみなわけですけど。なんというか、インドネシアに侵攻したことは覚えてても、そこがオランダの植民地だったことは忘れてるみたいな、いやまあぢぶんの頭がお粗末なだけかもしらんが。

 で。映画のパンフレットによれば、爆心地から1.6kmのところにあった捕虜収容所には、オランダ人・オーストラリア人・イギリス人の捕虜195名が収容されていて被爆、7名が死亡。そのうちのオランダ人3名へのインタビューが納められています。いずれも短いものですが、収容所での労働の様子、被爆当時のことなどあまり聴く機会のないもの。捕虜だった彼らは被爆時の年齢も少なくとも10代後半より上なので、80代後半から90歳過ぎになっています。

 92歳のスティーンベルゲン氏と88歳のショルテ氏はまだお元気そうで、記憶も話もしっかりしています。スティーンベルゲン氏は三菱重工の造船所での労働、ショルテ氏は防空壕掘りの作業中に被爆。スティーンベルゲン氏は、落ちてきた梁の間にはさまって助け出せなかった仲間を火の中に見捨てて逃げざるを得なかったこと、またケガをしたイギリス兵を防空壕に避難させていたのを連れ出すのを忘れ、その兵も焼け死んでしまったことを語ります。
 ショルテ氏は、被爆後の市内で瓦礫の片付けと遺体の収容に当たった時の話。「焼けた子どもを見るのが何よりつらかった」ということですが、そのときのことが原因で、戦後、精神を患う兵も出たと。

 90歳のシュカウテン氏は、ショルテ氏と同様に防空壕掘りの作業中に被爆。撮影時、がんと認知症とで筋道立った話はもうできないようでしたが、息子のロブさんがそばについて話を補う形でインタビューが進められました。ロブさんは、亡くなった母(シュカウテン氏の妻)が、原爆のトラウマで苦しむシュカウテン氏をどのように支えたかを語ります。ロブさんにとって、両親は誇りなんだな。
 シュカウテン氏の話は、ほかの2人のように明晰ではなく、明らかに違ってたりすることもあるんですが、それだけに彼が何にインパクトを与えられたか、何を強烈に記憶しているかを推し量ることもできます。意外だったのは、話がしょっちゅう「天皇」に戻っていくこと。彼の中で「天皇」が何かの軸になり、ぐるぐる回っているような。ヒトラーやムッソリーニに対応するのは日本では東条ってことになってるけど、「天皇」に対する感情というかなんというか、それは日本で思っている(あるいは思われている)ものとは齟齬があって、それは日本が国内で意図的に流されてきた言説による「齟齬」でもあるんだよな。

 同じ収容所の捕虜でも、原爆のとらえ方は三者三様。しかし、シュカウテン氏の、どこか詩的でもあるその言葉を、多くの人に聞いてもらいたいと思うのでもありますよ。
 
 

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