独立機関銃隊未だ射撃中
この映画は存在も含めてまったく知りませんでした。新文芸座のチラシに書かれていた短い紹介には「隠れた名作」とありましたが、ホントにこういう映画が埋もれてるんだよΣ( ̄ロ ̄lll)! まだまだ名作あるかもしれない。例によって日本映画写真データベースのこちらを。このデータベースは便利だけど、いかんせんデータ化されてるのが少ないよな……。仕事、くれないかな( ̄▽ ̄)。
1963年製作。ポスターはカラーですが、映画は白黒です。白黒でよかった……。
1945年8月11日。ソ満国境のトーチカを塹壕でつないだ前線の部隊に白井二等兵(寺田誠/現「麦人」)が配属される。現地召集の志願兵で17歳の白井に、峯岸兵長(福山博寿)がトーチカの仕組みを教える。彼が配属された重機関銃隊のトーチカには、班長の山根軍曹(三橋達也)以下、渡辺(佐藤允)、金子(堺左千夫)、原(太刀川寛)の4名。山根は頼りになるが陽気で調子がよく、原は学徒兵でどこか気弱そうなインテリ。白井は山根から、銃を口にくわえる自決のやり方を習う。ソ連の戦車隊が国境を越えたとの報に、5人は遺書を書く。山根らのトーチカに来る途中だった峯岸が死に、その遺体がトーチカの中に横たえられる。砲撃の中で金子が錯乱する。負傷者が後方に護送されたことを聞き、歩兵銃で掌を撃ち抜こうとし、山根に見つかり縛り上げられる。
12日。ソ連軍の猛攻の中、トーチカにも損傷が出る。金子は自力で縄を解くと、外に飛び出していって戦死する。その夜、一晩中トーチカのすぐ外でうめくソ連兵の声に、みな眠れない。渡辺が一人出て行って、ソ連兵を射殺する。
小栗小隊長(夏木陽介)が「恩賜の煙草」と酒、ようかんを持ってトーチカへ来る。「いつまでがんばるんですか」という山根に、小栗は「守備隊の方針は「死守」だ」と答える。一同、言葉もない。
13日。白井が指揮所との連絡に出るが、自分たち以外のトーチカはすべて壊滅し、小栗小隊長も戦死していた。ソ連軍の激しい砲撃に重機関銃1丁ではらちがあかず、山根と渡辺が地雷を戦車のキャタピラーに直接突っ込む戦法に出るが、戦車2台を撃破したものの、山根は直撃弾を受けて戦死。3人となったトーチカに向けて、ソ連軍から降伏勧告の放送が流される。
その夜、三人それぞれに語り始める。原は、なぜもっと勉強しなかったんだろう、と授業をさぼってばかりいたことを悔いた。白井は、入営前に映画ばかり見ていたが、いつも怒る父親も何も言わなかったと。渡辺は貧農の出で、軍隊に入って初めて革靴を履いた、字も読めるようになったし、腹一杯喰うこともできた、と言う。白井が、渡辺の軍服の胸に縫い付けてある五銭銅貨について尋ねると、これは女房が「死線(四銭)を越えて五銭、苦戦(九銭)を越えて十銭と言ってつけてくれたんだ」と、働きづくめの妻と幼い子どものことを心配し、除隊したら満州に妻と子も呼んで……。
14日。再び降伏勧告の放送が流れる。これ以上の戦いは無意味だ、最後の選択は個人にゆだねられるべきだ、と原が言い、投降しようとする。渡辺も白井も止めはしないが、最後に原が叫ぶ。「三人で生きようということをどうしてわからないんだ!」。渡辺が「オレも行きたいんだ、だが行けないんだ。なんでだがわからないが」と答える。と、最後の総攻撃が始まり、トーチカの銃丸から火炎放射器が火を噴き、渡辺がもろに火を浴びる。火を浴びながらも反撃を試みるがもはやどうすることもできない。
やがて、崩れ去ったトーチカの下から、原がかろうじて這い出す。「渡辺……、白井……」と二人を探す原。土の下に五銭銅貨を縫い付けた軍服を見つけ、なんとか掘り出すが、渡辺には首がなかった。白井が最後にいた近くの壁には、肉片ともなんともつかないものがへばりついていた。原は立ち上がって歩き出す。11日に銃の照準器から見た花が、奇跡のように一輪だけ咲いていた。ふと手を伸ばす原を、直撃弾が埋めた……。
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