暁の脱走その1
田村泰次郎の「春婦伝」を原作にした1950年公開の映画。田村泰次郎って、文庫の「肉体の門」っきり読んでないんだけど、どうもやっぱりそんなに好きじゃなくて、しかしこの「春婦伝」も「肉体の門」に収録されてたので読んだことは読んだんだよな。そんで、やっぱり好きじゃなかったという。
で、ちょっと映画の方もどうしよーかなーとぐずってたんだけど、新文芸座で「独立機関銃隊……」と二本立てだったので、まあついでに見るような格好で。
原作もその後鈴木清順が撮った映画もヒロインは従軍慰安婦ですが、内地から来た慰問団の歌手に変更になったいきさつはこちらのサイトに。ただこの設定変更はやっぱりこの映画をダメにしてるなー、と正直思います。一応、ヒロインの春美に結婚歴があることについては台詞の中でさらっと触れられますが、なんかこう、ちぐはぐなんだよなあ……。山口淑子のキャラがあってないわけじゃないとは思うんだけど。
例によって、「公式」の「あらすじ」は、ちょっとニュアンスが変わってる。何でなんだろう。
中国戦線。駐屯地に帰還した部隊の中に、中国軍の捕虜となっていた三上上等兵(池部良)と慰問団の歌手春美(山口淑子)がいた。春美はすぐに慰問団の宿泊所兼酒保であるホールに帰されるが、三上は営倉に入れられ、取り調べを受ける。
春美ら内地からきた慰問団を護送するトラックが途中で襲撃を受け、駐屯地に引き返す。その時の護送担当の三上に春美はすでに目をつけていた。道路が破壊され、帰れなくなった慰問団の女性5人は、ホールを改装した宿舎に住むことになる。副官(小沢栄)は春美に目をつけて追い回すが、副官の伝令兵である三上は、春美がいくら迫っても関心を示さない。ある晩、副官を迎えに来た三上が「頭痛がする」というのを幸い、春美は自分の秘密の部屋に三上を誘い、そのまま一夜を共にする。朝方、春美と外に出ようとするところを巡査所長に見つかった三上は営倉に入れられる。
その夜、夜襲を受けた部隊は、三上を前線に送り出す。春美は三上を捜し回り、城外で負傷し、倒れている三上を見つけると、その横に横たわり銃剣で死のうとする。しかし二人は中国軍に助けられ、病院へ収容される。
中国軍の看護を受け、三上は次第に回復するが、自分が捕虜になったことを受け入れられない。中国語に堪能な春美は周囲になじみ、中国軍の投降勧告を受け入れて、ここで二人で暮らそうというが、三上はかたくなに拒み、部隊に帰ると主張する。二人は、途中まで中国人に三上を運ばせ、討伐に出た原隊と合流する。
「女と駆け落ちした挙げ句、中国軍の捕虜となった」三上を、軍は許さない。三上は「副官殿は自分をよく知っている、助けてくれる」と言うが、副官は春美を取られた腹いせと、部隊のメンツのために三上を銃殺にするつもりだ。三上の真面目さを知る小田軍曹(伊豆肇)ら見張りの戦友達が、副官達には知られぬように春美の面会を見逃し続ける。副官の心づもりを知ってショックを受けた三上は、春美に手榴弾を用意させて自決しようとするが、手榴弾は不発で果たせない。嘆く三上に、「死ぬ覚悟があるなら、あんたの命を私に頂戴」と、春美は二人で脱走する手はずを整える。
脱走に気づいた小田は、ぎりぎりまで待って非常ラッパを吹かせる。その頃には、二人は避難民に混じって城外に出ていたのだが、副官がそれを制止。避難民の列から逃れて走る二人を狙撃させようとするが、戦友達は二人を撃つことができない。業を煮やした副官は、自ら城壁の上の機関銃で二人を射殺する。三上の戦病死が発表される。
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