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2016/06/20

シャンブルのトリプルビル「あやとり」

 えー、ロイヤルのRJは、ムンタギロフとラムの回に行きましたが、とりあえず19日のシャンブル・ウエストのトリプルビルの方から。もうネタはたまりにたまっているので、書きやすいところから行かないと。
 場所は八王子のオリンパスホール。初めて行くホールでしたが、2階のサブセンターの中よりの席、例によって「通路の前だけ高い手すり」が設置してあって、これがギリギリ舞台にかぶるというやや悲しい席でした……orz。行ったことのないホールはこれがなあ。まあ、前方にほんとギリギリという感じだったので、「あやとり」や「時雨西行」といった、部分照明の多い作品では気にならなかったんですが、オープニングの総踊りと最後のライモンダの3幕という、舞台全体が明るい作品ではやはり気になりました。安全のためだというのはわかってるけど、なんとかならないのかなあ。設置するときにちゃんとあちこちに座って検証するとか。

 ま、それはさておいて。トリプルビルですが、前述のようにオープニングの総踊り(とはいっても後の演目に出る人は出てないわけですが)が別についていて、事実上4演目。ビゼーの「シンフォニーインC」を使って、男性3人と女性たくさんによる……ええと、振付は書いてないけど今村氏かな。黒のビスチェに緑のベル型の衣装。特に何か特徴的な感じはしないけども、いきなり「あやとり」から始まっても困惑するような気もするし、これはこれで、という。男性(正木さんほか2名)の脚がすらっときれいだったなあ。
 男性は、シャンブルの団員リストに載っていない人が何名かいたけど(宮本くんも出てた!)、キャスト紹介が載っていたのはジョン・ヘンリー・リード(と別扱いの中村梅玉氏)だけで、あとは群舞要員としての出演だったようです。

 休憩なしで田中祐子さん振付の「あやとり」。タイトルがぴんと来なかったのであまり期待はしていなかったのですが(失礼な)、振付もダンサーも舞台装置や照明、選曲など、どれもがとてもよくて、これは嬉しい誤算でした(失礼な)。自分は、牧はたまにしか見なかったのですが(しかも民代さんがいた頃……)、女性ダンサーでは田中さんがいちばん好きだったので、その意味でも嬉しい。
 事前に見た記事では「認知症の母と介護のために結婚をあきらめる長女」がテーマだとのことでしたが、プログラムにあるインタビューでは、八王子出身の作家である篠田節子の「長女たち」がモチーフだそう。

 真っ暗な中に、白の糸(実際はテープのような)があやとりを思わせるように何本か張られ、それが落とされる。中央に白のワンピースで、カーニバルで使うような、鼻から上を覆う仮面の「母」(吉本真由美)と紫のワンピースの「長女」(斉藤菜々美)。上手には観葉植物をあしらった大きなカゴ(庭を模している)に、天井から砂時計のように砂が落ち続けている。下手の奥には透明アクリル(多分)の箱があり、そこで眠っていた子どもの頃の長女と次女(黄色のワンピース)が出てきて、母と3人になりながら思い出を踊る。途中から男の子が姉妹の踊りに加わり、やがて妹の方とPDD。男の子が妹をだっこしてくるくる回りながら上手袖に入ると、そのままぐるっと回って出てきたかのように、大人になった妹をフィアンセがだっこしてくるくると出てくる。二人は結婚して家を離れ、いつか長女もその場を去って母がひとり残される。

 一人になった母の前に3人の白いドレスの女性(「コロス」プログラムによると「痴呆になっていく過程を示す旅先案内人」)が現れ、母の仮面をはずす。4人の踊り。いわゆる「空の巣症候群」を思わせるような場面。母が3人と一緒に捌けるんだったかな。長女とフィアンセ(土方一生)のPDD。触れるような触れないような繊細な踊りで、この場面がとても好きでした。そして戻って来た母は認知症になっており、長女とフィアンセは母をなだめようとするが、母は二人のこともわからずに暴れるばかり。長い格闘の末に、フィアンセは母を抱いて、子どもたちが入っていたアクリルの箱の向こうに横たえ(施設に入れたことを暗示?)、長女は舞台中央でうつろに座り込む。

 子どもの年齢がわからないのでアレですが、子ども時代の姉妹が小学生、男の子が中学生くらいでしょうか。すごく上手い子役さんたちでまずはびっくり。ユニゾンもぴったり決まってますが、次女と男の子のPDDはマクミラン的な結構難しいリフトやキャッチもあったのに、「しっかり確実に」といった感じにこなしていました。それにも増して、場や流れを途切れさせずに、きちんと作品世界の一部になっていることに感心しました。
 全体にユニゾンが多いのですが、それがどのダンサーの組み合わせでもぴったりときれいに合っていて、特に最終場面での長女・フィアンセ・母のトロワでは、母がほかの二人と同じ振りを踊りながらも壊れてしまっているのが荒々しくも痛ましくて見事でした。女性は全員裸足だったかな。それから長女のフィアンセを踊った土方さん。初めて見た時は「わー、ヤンキー」みたいな印象だったのに、いいダンサーになったなあと(たまにしか見てないので申し訳ない)。話の流れからいくと、母の介護に明け暮れる長女を捨ててしまうのかと思ったけど、最後まで献身的にと積極的にというか、長女を支えてというよりもむしろ同等くらいに母と「格闘」し続ける、いいダンナ(フィアンセだけど)でありましたよ〜。

 壊れてしまった母も、好きな人と結婚した妹も、格闘の末に施設に入れる決断をする(多分)フィアンセも長女も誰も悪くないんだよな。悪くないんだけど、「幸せ」はこない。

 こういう創作ものをあまり見ないので語彙が少ないんだけど、自分の引き出し的にいうと、佐多さんの(OFCでない)作品にイメージが近いかな? 音楽はピアノを主体としたあまり強すぎないもので、母のパートのところだけボーカル入り。時折、あやとりの糸を思わせるような細長い長方形が交錯するのが照明で床に描き出され、ほかにもセットは少ないけれど照明がそれを補いつつ、上手後方の砂が落ち続ける庭(を模した一角)が印象的で、全体に過不足なく調和した「世界」でした。 
 

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