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2017/02/26

雲の上団五郎一座

 初映画は新文芸坐の喜劇特集。「南の島に雪が降る」との2本立て。有名なのに見る機会がなかったんだよなあ、2本とも。

 地元の親分(藤木悠)と団員との女のトラブルで興行先を追い出された雲の上団五郎(榎本健一)とその旅回りの一座。次の興行先へ向かう船で乗り合わせた「新しい演劇運動の精神」を熱弁する演出家の酒井(フランキー堺)と、その教え子で興行主の娘はるみ(水谷良重)と組み、「悲劇ラブミー牧場」を上演する。そのあまりの出来の悪さに興行主(花菱アチャコ)は倒れてしまうが、レコードのかけ間違いのトラブルが客に大受け。酒井は舞台をそのまま喜劇に転換、連日大入りにしてしまう。
 困ったのはライバル興行師で、自分のところの女剣劇には全然客が入らない。女剣劇一座は一計を図り、団五郎一座の中心の役者(由利徹ら)を飲ませて出演できないようにしてしまう。困った酒井は自ら「勧進帳」の弁慶を熱演。ついに大阪の大劇場から興行の依頼が入る。大阪でははるみのカルメン、酒井の闘牛士、団五郎の隊長による「カルメン」を初演、大当たりをとるのであった。

 懐かしの新喜劇大集成!(当時は「懐かしの」じゃないんだけど)みたいな映画。冒頭の小坊主(道成寺の扮装)とヤクザたちの墓地での追いかけっこギャグから始まって、あったあったこんなネタ!が満載。なにせ原作が菊田一夫だもんねえ。大阪の興行主が高島忠夫、倒れた興行主を診る医者は藤田まこと。三木のり平、八波むと志、佐山俊二と当時の喜劇人総出演。
 フランキー堺演じる演出家の酒井は、ことあるごとに「演劇の精神とは何か」と熱弁をふるう。もちろんこれは「演劇運動」のパロディなんだけど、酒井の「演劇の精神」は、「観客を喜ばせること」に収斂されていく。「大衆が求めているものはなにか」を誇らかに提示するところに、監督や脚本演出まで含めての「喜劇人」の矜持を見るわけだな。由利徹らが女剣劇一座に飲まされて劇場に来ず、酒井が自ら弁慶をやる、と言ったときに、団五郎らは止めるわけですよ。セリフも入ってないでしょう? それを酒井が「精神だ、精神があればできる!」と言って舞台に出て行っちゃうんですな。もちろん、セリフは字数だけを合わせたメチャクチャな、元祖ハナモゲラ語とでもいうようなもの。演出家だから段取りはわかってるんだろうけど、縦横無尽にグランジュテまでやってみせながら走り回る酒井に観客は大喜び。遅れて戻って来た由利徹らに団五郎は「何やってんだ、先生は精神だけで勧進帳やっちまってるぞ」ってね。ここまでくると、最初は高尚なはずだった「精神」そのものがもうパロディになってしまったともいえるし、逆に本来の演劇の精神に目覚めた、ともいえるのね。なにせ、最後のカルメンでは牛役の二人が「先生、この牛の精神はなんでしょう」って大まじめに聞きにきて、酒井をきょとんとさせるくらいで。カルメンの闘牛士の歌う「牛殺しの歌」も好きだなあ。

 それにしてもフランキーの弁慶は本当に必見。すごいよ。

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