フイチン再見!
「フイチン再見!」村上もとか
最新巻の4巻が出ました(^▽^)。
村上もとかは好きなマンガ家じゃないんだけど、上田としこ伝とあっては見逃すわけには参りませんのん。まあ絵が嫌いなわけじゃないからな(むしろ上手いよね)。
上田としこの「フイチンさん」は、小学生の頃に近所の貸本屋で借りて大好きだった漫画。ええ、うちの近所には70年代になっても1軒だけ、貸本屋が残ってたんですよ。多分80年くらいまでやってたんじゃないかな。漫画が1泊2日で30〜50円。発売1ヶ月以内だと100円。図書館には「はだしのゲン」と「火の鳥」しか漫画がない時代のこと、ずいぶん借りて読みました。水野英子も志賀公江もわたなべまさこも忠津陽子もみんなこの貸本屋で読んだなあ。
満州を舞台にしたこの「フイチンさん」は、もうストーリーはさっぱり覚えてなくて、とにかく「愉快」「痛快」という言葉がぴったりするようなドタバタで、今となっては「大好きだったなあ」という記憶しかないんだけれども。復刊されたときに迷ったんだよなあ、買っておけばよかったかな(←例によって高かった)。
村上もとかのこの漫画は、その作者の上田としこの一代記。ハルピン在住日本人として上流家庭に育ち、女学校に通うために一時帰国。マンガ家になるという夢を抱いてデッサン会に通ったりしつつも、お嬢さま育ちの甘さが抜けきれず。再度ハルピンに戻り満鉄に就職、女性社員の待遇改善に奮闘しつつも退職して新聞社に再就職、そして敗戦。4巻では、満鉄社員として開拓青年義勇軍へ慰問に行き、学生サロンを開いていた母が何人もの出征兵士を見送るという場面もあります。そして敗戦後に父のアパートメントを避難民のために解放、3000人が住むいわば「自治区」的に、しかし事実上の「籠城」となったところまで。そしてこの後、引き揚げについては「ぼくらが出合った戦争―漫画家の中国引揚げ行」でも描かれるのですが……。
上田としこ自身もたいそう魅力的ですし、お母さんがまたすごい人( ̄▽ ̄)。当時のハルピンの様子も面白い(この辺は村上もとかならでは)。バイタリティーにあふれ、何があってもめげずに進む(いや、めげるんだけど)としこ本人がフイチンさんだったんだな。
「ぼくらが出合った戦争―漫画家の中国引揚げ行」石子 順 (著), 森田 拳次 (著), ちば てつや (著) これもオススメ。とくに石子氏の引き揚げ状況の解説は教わるところが多かった。
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